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銀狼
第10章 討伐
「あの女性は…」
「お嬢様だ、セレナお嬢様が戻ってきたぞ!」
「…よく…無事だったなぁ…」
周囲の兵達も驚きを隠せない様子だ。
セレナを拐った盗賊は狼に喰い殺され、それから何日も消息が途絶えたままだったというのに…。
セレナの帰還は彼等の心持ちを僅かだが軽くした。
そして
「……お父様…っ」
幼い頃に母を亡くした自分を、寂しい思いをさせまいと懸命に育ててくれた優しい父親…
その姿を数日ぶりに見て心の底からホッとしたのは彼女も同じだ。
「…セレナ、悪かった…!! 私を許してくれ」
「どうしてお父様が謝るの?」
「怖い思いをさせてしまった。あの賊達がお前を狙うと予測できなかったばかりに…!! 」
アルフォード侯は彼女を抱き締めたままそう謝っていた。
明らかに痩せ細った腕の中の娘に、胸が痛む。