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銀狼
第10章 討伐
帰ろうと、セレナは何気なくそう言った。
しかしアルフォード侯は、彼女の手をとり握りしめながら微笑むだけだった。
「それはまだできないよセレナ」
「…っ…どうして?」
「……?」
セレナは声を荒げた。
彼女のその反応に少し驚いた様子の侯爵は、幼い子供をあやすように言って聞かせる。
「お前は先に家に戻っていい、私の部下に案内させよう」
「…お父様は残るの?」
「…っ…そうだ。だが安心しなさい、お前がいつ帰ってきても良いよう、屋敷に着いたらすぐに食事もとれるように手配してある」
「ここで何をするつもり…!? 」
「…仕事だよセレナ。…ああ、着いたらその汚れたドレスも着替えるといい。お前の二十歳の誕生祝いに何着か新しいものを用意しておいたから」
「そんなこと…ッ」
違う…そんなことを聞きたいんじゃない。
食事もドレスも、今はそんな物どうだっていい。
「…誰か、私の娘を屋敷へ送ってくれないか」
セレナの思いに気付かない彼は周りの部下に問いかけていた。