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銀狼
第10章 討伐
「──狼を…」
「……!」
「…殺しに行くの?」
話をそらす侯爵に
最も率直な問いが投げ掛けられる。
周りにいるのは銃を持った大勢の兵士達…。
でも、どうか思い過ごしであって欲しかった。
──しかし彼女の希望は打ち砕かれる。
ひとつ溜め息をついた侯爵は表情を固くした。
「…そう、私達には狼討伐の使命がある」
「……!! 」
「セレナは早く帰りなさい…。私はまだ、残らなければ──」
「どうしてそんなことを…!! 」
「どうして、だと?」
侯爵は顔をしかめた。
娘が何をそれほど動揺しているのかを理解できない。
そもそも討伐の理由など、今さら疑問に持つ事ではないのだから。
「狼をいくら殺してもきりがないって言っていたじゃない。…なのにどうして急に…」
「私達が探しているのはただの狼ではない。…奴等を裏で狡猾に操る…──化け物だ」
──化け物
「……化け物、…って…?」
「──…『銀狼』という狼だ。セレナも名前くらいは聞いたことがあるだろう」
「そんな…」
ばれている、彼の存在が──
セレナの顔が青ざめた。
胃を固く締め付けられ、喉の奥を嫌な空気が抜ける音がした。