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銀狼
第11章 儚き運命
「──…それは狼に同情しろって意味ですか」
その時、そう言って彼女の言葉に異を唱えたのは黒髪の部下ではない。先程までその隣でセレナを庇っていた青年だった。
「……違う、ただ彼等にも言い分があるって言ってるの。あなた達は想像したこともないでしょうけど…っ」
「──同じことですよ」
時間の経過に連れて、彼の顔にかかる幽かな木洩れ日も、柔らかく変わっていき…
青年の茶色の髪が緩やかに照らされていた。
「狼の言い分?そんなこと想像して何になるって言うんですか…!」
優しげな顔の丸い目尻がぐっと狭まり…その表情が厳しくなる。
「セレナ様、僕は…僕たちは……っ」
「…おい、どうしたラーイ。急に取り乱して…」
「──…ッ」
今、なんて…?
彼はなんて言った…?
「ラーイ?」
「…え…」
「あなたラーイという名前なの…!? 」
「…そう…ですけど」
「どうしてこんな時に…ッッ」
セレナは困惑し始めた。
頭の中を強い風が吹き荒れる──。
冷静さをなぎ倒し、彼女の顔から色を奪った。
“ こんな状況で、どうしてラーイの名前がわたしの前に現れるの ”
これではまるで……
「…そんなの…絶対にイヤ……!! 」
「お嬢様…!? っあの…」
セレナの様子が急変し、取り乱しかけていた青年も我に返る。