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銀狼
第3章 銀狼

次に彼女が目を開けた時、その瞳は先程までとはうって変わり、不思議と据わっていた。
「──…!」
肌と耳が、風を感じる。
注意深く岩壁を観察し始めたセレナは、苔や蔦に覆われゴツゴツとしたそこに、──小さな穴を見付けた。
それは絶壁のすそにあり、入り口は確かに小さいがどうやら奥に長く続いているようだ。
風はそこから吹き出していた…つまり
この穴は何処か外へ続いている。
“ ラインハルトの森から、出られる…? ”
彼女の胸に灯ったのは蝋燭のような頼りない希望。
けれどそれが最後の頼みの綱で、大きく唾を呑み込んだセレナはその中に身体を滑らせた。
──
彼女の胸ほどの高さの洞穴を、前屈みで進む。
奥に行けば行くほど穴は広くなり、彼女の背丈に、さらには直径数メートルまでに広がってとうとう横に大きく広がる地底空間へと変わった。
鍾乳洞だろうか…。
セレナのたてる足音が静かに響き渡る。

