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銀狼
第11章 儚き運命
彼を見上げた兵士達は満月の眩さに目を細めた。
降りたところを狙ってやる…!!
彼等は着地点に狙いを定めた。
───スタン…ッ…
「・・・・・・」
いったい、どういう事であろうか。
銀狼が地に降り立ったにも関わらず、彼に向けられた銃口はひとつとして火を吹かない。
兵士達が満月に目を眩ませた一瞬の間に、何か…不可解な事が起こったのだ。
「‥‥な‥何だアイツは‥‥!! 」
何が起こったのだ
「‥‥あの " 男 " が、‥っ‥あれが銀狼の正体なのか‥‥!? 」
聖地の中央。
祭壇の前に軽やかに降り立ったのは、鈎爪の付いた白い足──。
それは獣ではない、紛れもなく人間の足だった。
「──…」
返り血を浴び血濡れた頬。
月光で煌めく銀髪が、其処に張りついている。
大きく開いた胸元から見えるは、真珠を思わせる乳白色の肌に刻まれた、朱い傷。
戦闘によって傷付きながらも、一切の乱れを見せぬその佇まい。
男でありながらの何とも艶美な雰囲気に
兵士はただ息を呑むしかなかった。
どこか冷めた男の瞳が人間達をぐるりと見渡す中で、それに相対するかのように、目の下に刻まれた暗紅色の刺青( イレズミ )が怒光する。
彼が見た光景は、間抜けた表情で自分を見つめる人間と…その足元に横たわる無数の狼達だった。