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銀狼
第11章 儚き運命
「…あの昔話は本当だったのか」
「あんな化け物が…いるなんて…!! 」
「──…クッ」
「‥‥!? 」
目を丸くし、たどたどしく呟く兵達に向けて
銀狼の顔に不気味な笑みが浮かんだ。
牙を覗かせ、整った口角がつり上がる──。
たったそれだけで凍り付く人間達。
「…くく…、生きているのは私だけか…。無様なものだ…」
「……っ」
「よくぞやってくれたものだな人間よ。どこまでも醜く愚かしいお前達が、よもやここまでできるとは思いもしなかった」
そう言った銀狼は唇の血を舌で拭った。
人間達を見渡す中で、彼はひとりの男に目を止める。
「…貴様が人間の王か? 挨拶が遅れたな」
「……」
「いや、人間の王はこの様な戦地には来ぬか…。お前達が崇拝する者は、今頃何処でふんぞり返っているのだ」
「…私は王ではない。王は民を治める尊い御方。こんな所に足を運ばせるわけにいかぬ」
銀狼が語りかけた相手は銃士隊の長官、アルフォード侯爵であった。