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銀狼
第12章 epilogue
「…そう言えば、セレナの姿が朝から見えないのだが何か聞いているか?」
報告を終え退室しようとした部下を呼び止め、侯爵が尋ねた。
「自分は何も伝言などは受けておりませんが」
「…わかった」
「──…ただ、今夜は満月で御座います、長官殿」
「……!! …そうか、そうだったな…」
一瞬…手を止めた侯爵は、頷きながら目線を落とした。
「構わないのですか?…狼がいないとは言え、お嬢様がひとりで森に入るのをお許しになられて…」
夜の森には、どんな危険があるかわからない。
「ああ……」
だがあの子が森に向かうのを止める事はできない。
「…セレナには強力な守り神がついている」
心配はいらない…
彼は部下にそう告げた。
もしかすると侯爵は、自分自身に言い聞かせているのかもしれない。
複雑な表情を見せた後、彼は報告書を引き出しに収めた。
───