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銀狼
第3章 銀狼
その男は確かに
" 人 " の形をしてはいた。
「──…!! 」
だが…人と呼ぶにはあまりに
あまりに人外の美しさを放っていたのだ。
切れ長の双眸。
大きめな尖った耳。
左目の下には暗紅色の刺青( イレズミ )が…獣の爪痕の形に彫られていた。
漆黒の長毛の衣を風になびかせ、そこから僅かに見える白く長い指が彫刻のような曲線美を描き
大胆にひらいた胸元では、首からさげられた紺青色の宝石が妖しく光りを放つ──。
喜びも悲しみも凍り付いてしまったかのような無の表情が、嫌みなく整った男の美貌を引き立てる。
果たして本当に男は其処に存在しているのか…それすら疑いたくなる異質な空気をまとっているのだ。
そして何より
その見事な銀髪がセレナの目を釘付けにした。
足までつきそうなほどの長い髪はひとつに結われ
それはまるで鬣(タテガミ)のごとく…
狼のしなやかな尾のごとく
月に照らされながらバサリと大きくなびいていた。