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銀狼
第3章 銀狼
“ これが……銀狼の正体 ”
セレナは自分が見ているその光景に圧倒され、ピクリとも動けずにただ息を呑んだ。
人の姿に化けるという話は聞いていた。でもまさか…その変化の一部始終を見守る日が来ようとは夢にも思っていなかった。
それは誰ひとり入れない開かずの間の鍵穴から、中をこっそりと覗き見る感覚に近い。
見ることは許されない…だからこその眩しさと魅力が此処にある。
スッ───…
「──…!! 」
伏し目がちの男の顔が下がり、その瞳が暗闇に隠れた彼女を捕らえた。
長い睫毛に半分を遮られた瞳は、まるで雪深い山の泉のように、底が知れない…吸い込まれそうなグレーだった。
「‥‥ぁ‥ッ‥!! 」
「いつまで其処に身を潜めるつもりだ。
───…人間の娘よ」
囁くような低い声は
小さい筈なのに…彼女の所まで真っ直ぐ届く。
もう、逃げ道は存在しない。
その声はセレナの本能にそう伝えてきた──。