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銀狼
第3章 銀狼
逃げるか、許しを乞うか。
どちらにせよ上手くいく予感なんてしない。
それでもセレナには頭を空洞にしている時間などなかった。
ふわりと舞い降りた銀狼は、中央の祭壇──
高く連なった石段の下に降り立ち、そして彼女に目を遣る。
「‥‥ッ」
セレナはゆっくりと腰を上げて、草むらからとうとう姿を現した。
一歩一歩、震える足で男のもとに向かう。
そんな彼女を囲むように集まりだした狼が、恐ろしく唸りながら彼女の後ろをついて来た。
狼達にせき立てられるような形でやっと男の前に辿り着いたセレナは
岩場の上にガクリと膝から崩れた。
「──…」
「…ゆっ…許し…て…」
相手は人ですらない化け物だ。
貴族のプライドなどがいったい何の意味を持つだろうか。
「…許して 下さい……!」
震える声で男に命を乞うた。