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銀狼
第3章 銀狼


「殺さないで…──ッ」


あまりの恐怖に顔を上げることもできずに、セレナは男の足を祈るように見つめる。

黒い衣と対照的な、泥のひとつも見当たらない白い足には鋭い鉤爪がついていた。



「……娘」

「……!!…はい…」

「お前は私が何者かを知っているのか?」

「え…!? 」


この男が…何者か

セレナは答えるのを躊躇した。

もし間違ったら殺されるかもしれない…そう思ったからだ。

しかし銀狼の声は心臓をわしづかむかのようにズシリと重たくて、到底 無視なんてできなかった。



彼女は恐る恐るその名を口にする。

…その " 名 " しか、セレナは知らない。



「…銀狼…ッ…です」

「ギンロウ?違うな……」


だが彼女の答えは呆気なく否定された。

不正解のセレナに、男は凍り付くような低音の声で言ってみせる──。


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