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銀狼
第3章 銀狼
だが当然のごとく──
「…あ、…く、ぅ…!」
人間の、しかも女の振り回す短剣など凶器のうちに入らない。
短剣を持ったセレナの手首は男にやすやすと掴まれて動きを封じられた。
「…くッ…離して…!! 」
「意外にも面倒な女だったか…──」
「──…!!! …あぁ!? 」
反抗的に銀狼を見上げたセレナ。
彼女の視線が男の瞳とぶつかった瞬間──
その身体から一気に力を奪い取られ
何の事態も呑み込めぬまま、男の胸に崩れ落ちた。
手から滑り落ちた短剣を
銀狼は横にはたき飛ばす。
「‥‥ぇ‥!? 」
セレナは自分の身に起きた変化に戸惑うばかり。
「な…──ッ」
何をされたの…!?
「何も特別な事はしていない…。ただ……私の殺気を感じたお前の本能が怯え、身体が縮こまっているだけだ」
「そんな…っ…」
「暫くは満足に動けんだろうな……」
その時ギラリと光ったのは
笑った銀狼の鋭い牙だった。
白くそろった小粒な歯の中で、口角から剥き出した長い牙だけが水晶のごとく異様な輝きを見せている。