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銀狼
第5章 逃走
彼女は辺りを見渡した。
自分がいる洞穴の中には殆ど何もなく、隅に大小ふたつの水瓶が置いてあるだけ。
つまり、彼女がその裸体を隠すような物は何もなかったのだ。
「……ッ…」
それでも、迷う時間はない。
“ こんな所で恥ずかしがっていたらわたしは… ”
セレナは立ち上がり、そろそろと足を歩かせて
傷を負った左腕をかばいながら暗闇の洞穴から光の下( モト )へと踏み出した。
眩しさに顔をしかめた後には、開けた視界に異質な光景が広がっていた。
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