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銀狼
第5章 逃走
セレナは腰を低くして慎重に降り始める。
「──…っ」
吹き込む風が何も身に付けていないセレナの剥き出しの肌に軽く触れる。
そんな些細な風さえも今の彼女には恐怖だった。
何度も休憩を挟みながら、石段にしがみつき少しずつ身体を滑らしていく──。
“ もし、ここで足を踏み外せば ”
先ず命はないだろう。
いや……というより
簡単に死んでしまえる。
怖いのは落下している間だけ──あとは、この苦しみから解放されて楽になれる。
そんな考えがふと頭に浮かび
──それを消すためにセレナは首を振った。
降りることに集中したい。
そして漸く…
彼女の足が地面に降り立った。