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略奪貴公子
第11章 仮面舞踏会
仮面舞踏会の会場は城の一階。広々としたホール。
白亜(ハクア)の壁と大理石の床
吊り下がった巨大なシャンデリア
ホールの両端に二つのなだらかな階段と
その壁に並ぶ肖像画の数々。
夜も遅いというのに、この場所は光が溢れて輝いており、重厚な雰囲気の公爵邸とは違う華やかさだった。
二人は会場に入ると、マントとショールのそれぞれを入り口にいる従僕に手渡した。
「…華やかですね」
レベッカにとって舞踏会とは慣れた場である。何故ならば、貴族の男性と知り合うためにオイレンブルクの義理の両親が彼女をよく社交場へ連れ出してきたからだ。
しかしそんな彼女にとっても、このバイエル伯の舞踏会は驚くような豪華さだった。
♪♪♪~
ホールの中央、階段に挟まれた所で楽団が奏でる演奏が会場を包んでいる。
それに合わせてダンスを楽しむ男女。
階段上では、手すりに寄りかかった貴婦人と紳士が談笑しており、中には若い女を物色している者もいた。
彼等はみな色とりどりの仮面で顔を隠している。
主催者であるバイエル伯も、これではどこにいるのかわからない状況だった。
「レベッカ…お手をこちらに」
「……っ、ええ」
レベッカが会場の光景に圧倒されていると、クロードが自身の腕を彼女に差し出した。
《 レベッカ 》
その呼び掛けはどうしても聞き慣れない。
いつもの皮肉っぽい、公爵夫人、という声が記憶の中で反芻(ハンスウ)されるのに、今宵だけは違うのだと彼は言う。
レベッカは差し出された腕にそっと手を添えた。
それは手というよりは…指を添えたといった方が正しいほどの控え目な所作だった。
クスリという微笑みが頭上から届く。
そして二人は入り口から離れてホールの中心へと歩き出した。