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略奪貴公子
第11章 仮面舞踏会

 剥き出しの腰に直接触れる指──。

「……っ」

「余計なことは…追い出してしまえばいい」

 ぎゅっと力を込めて手をとられる。

 ──余計なこと

 ああ……そうね

「──…」

 レベッカの閉じた口の端に、無意識に微笑みが浮かんでいた。



 今日の彼女は今までとは違う

 もう、相手の爵位も家柄も関係ない

 誰だっていい、たとえ怪盗でも…

 余計な事を考えなくてもいいのだ



 レベッカは視線をあげて彼を見た。

 彼も柔らかく笑っている。

 ──そして二人のダンスは続いた。





………




 今宵のクロードは、全身を深紅で統一した重厚な雰囲気の宮廷コートとブリーチズを身に付け、黒のドレスのレベッカと合わさると、色気の漂う妖しのオーラを纏っていた。

 そのオーラが人の目を惹き付ける──。

 次第に二人に注がれ始めた羨望(センボウ)の眼差し。


──フワッ


 レベッカがくるりと回転するたびにスカートがきれいに舞い上がり、階段で眺めていた初老の紳士たちの頬を緩ませた。

 軽食を摘まんでいた者たちも、その手を止めてワイングラスを傾けながら二人を見守る。

 近くで踊っていた男女も、チラチラと二人が気になる様子で……足の動きが遅くなり、次第には止まってしまった。

 二人のダンスと……そして美貌が、男と女、それぞれを虜にしてしまう。

 仮面など付けていても隠しきれない

 それが人間の美しさ。

 ご婦人達からの甘いざわめきを一身に受けながら

「……」

 それでも、クロードはレベッカだけを見ていたのだ。


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