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略奪貴公子
第11章 仮面舞踏会
そして、楽団の演奏が始まった。
「メヌエットか…」
始まったのはメヌエット。優雅な前奏が広がってゆく。
本来なら格式高いメヌエットは、社会的地位によって踊る順番が決められている。
しかし、今日は仮面舞踏会──
人々は自らの地位を気にせず、ダンスを気楽に楽しめるのだ。
手を取り合ったレベッカとクロードも、曲の始まりに合わせてステップを刻み始めた。
優雅な旋律、軽快なステップ
時おり入るお辞儀のようなしぐさ──
もともとはフランスの田舎で起こった民族舞踊も、今では最高格の宮廷舞踊だ。
そのステップは細かく決められていて素人が躍りこなすには難しい。けれど二人の動きは変わらず滑らかだ。
「お上手です」
クロードが声をかける。
…当然だ、小さな頃から覚えさせられたのだから。
レベッカは心の中でそう返した。
「──…! 」
けれどその時、彼女はふと、あることに思い至る。
「ねぇ、クロード」
「……? 何でしょうか」
彼女の手をとり一緒に踊っている目の前の彼を見て…今までとは明らかに違った想いが芽生えたからだ。
確かに
レベッカは幼いときからダンスのレッスンを受け、社交界で恥をかかないように作法として身に付けてきた。
何度も舞踏会に足を運び、多くの高貴な殿方と手をとり踊った。メヌエットもワルツも、どのダンスでも完璧に踊れるように。
でも…それは何のためだったのだろうか?
「今はただ…楽しみなさい」
「あ…っ」
拍に合わせて、向かい合った二人の身体が重なる。
そしてクロードが耳元で囁いた。
我に帰ったレベッカがその瞬間、躍るのを忘れて思わず身を引きかけた時……彼の片手が逃げる腰を捕まえた。