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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義
それからレベッカ達は続けて二曲を躍り、彼女の息があがり顔が火照り出したところで休憩を挟んだ。
ホールの中央ではまだダンスが続いている。
賑やかな場所から離れ、レベッカは窓から暗い外の景色を眺めていた。
「何か見えますか?」
「……っ」
窓の向こうを見ていると、背後から不意に耳元で囁かれる。
振り替えるとそこにはクロードがいて、手には二人分のワイングラスを持っていた。
彼は片方をレベッカに手渡して壁に背を預ける。
「意外と早かったですね」
「…そうでしょうか」
仮面を付けたご婦人たちに囲まれていたと思ったら、いつの間にかレベッカの隣りに戻ってきている。
「ダンスって…こんなに楽しいものとは知りませんでした。初めてそう感じたかもしれません」
レベッカが隣のクロードに話しかけた。まるで…まだこの昂る気持ちが冷めないとでも言いたげに。
そのために、静かな外の世界を眺めていたのだとでも言いたげに──。
クロードは黙って耳を傾け、白ワインをコクりと喉に流し込んだ。
それを見上げるレベッカの顔にいたずらっぽい笑みが浮かぶ。
「でもわたし、実は、喉が渇いたときはワインではなくてビールを飲みたい女です」
「──…フッ、それは失礼しました」
クロードも笑っていた。
「…ばか、冗談です」
“ ホントのこと言うと冗談でもないけど… ”
レベッカもワインを一口飲むと、グラスについた赤い口紅を指で拭う。
今の自分は着飾らない言葉が素直に出てくる…そんな風に感じながら。