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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義

「ねぇ…ひとつ聞いてもいいですか?クロード」

「もちろんですよ」

 ずっと気になっていた。いつか…聞きたいと思っていたことを、今なら聞ける気がしたのだ。

「どうしてあなたは物を盗むの?」

「……これはまた」

 随分と今さらな質問だ。

 クロードはそう言いたげにクスリと微笑する。

「あなたは貴族でお金を持っている。わざわざ危険を犯して盗まなくても、欲しいものは手にはいるはずよ」

 にもかかわらず、あなたは《 怪盗 》を名のる

「…わたし、考えました」

「──…」

「あなたが物を盗む、本当の目的を──。あなたが忍び込むのは、決まって貴族かお金持ちの商人なんでしょう?」

 メイドたちがそう話していたのをドア越しに耳にしたことがある。

 またその時、メイドはこんなことも言っていた──。



『 その怪盗はきまって置き手紙を残していくの

 Der Appetit kommt beim Essen
 …欲には限度がない、ですって 』



 ──…欲には限度がない?


 つまり怪盗が示唆しているのは、欲にまみれた貴族たちの世界。その世界を、あなたは嫌っているから…。


「だから彼等をこらしめようとして、貴族から物を盗むのですよね?」

「……」

 レベッカの問いには、すでに確信のようなものが混じっている。

 レベッカが彼を見上げると、クロードは驚いたように目を開いて彼女をまじまじと見つめていた。瞳を隠してしまいそうな長い睫毛(マツゲ)が、パシパシとまたたく。



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