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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義

 普段の反抗心をむき出すレベッカと、今の素直なこの姿のギャップのせいで、よけいに愛らしく見えてしまう。

 それほど衛兵が怖いのか

 ここで彼等に捕まれば、二人の素性がばれ…そしてモンジェラ家の公爵夫人が、ブルジェ伯爵と舞踏会に来ていたことがばれてしまう。そのせいか。



「クロード……ねぇ…どこなの? わたしたちは何処にいるの…?目を、開けては…いけないのですか?」


「──まだです」


「……っ…そんな」


「それほど今の状況が怖いですか?」


「……え?ええ」


「捕まれば自分が公爵夫人だと知られるから?」


「……! それもあります、でも」


「……」


 レベッカは、彼の服を掴む手に力を込めた。


「でもあなたが捕まってしまうことの方が…怖いです」


「──…!」


「…っ…まだ…ダメ?」


「………。フッ」


「どうして?まだそんなに…危険なの…!?」


「ええ危険です。……だから、まだ」


「いつまでこうして閉じているの…!?」


「──…そのまま…。

 そのまま、ずっと目を閉じていなさい」


「──…!」



 クロードの唇の感触が、レベッカの唇に伝わる。

 驚いて開きかけた彼女の目だが、仮面ごしに彼の手に塞がれて視界は真っ暗のままだった。




 まだ


 開けるな




「クロード…っ」




 見てはならない


 まだ危険だ──危険すぎる


 私の欲に火をつけたのは


 他でもない貴女なのだから──。







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