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略奪貴公子
第16章 宝を守る武器

「黒髪の兄ちゃんに、渡された紙を見せたんだ」

「……」

「そしたらますます怖い目になってさ…っ、黙っちゃったもんだから」

 カミルは口を尖らせる。

「依頼は受けてやるから七日後に取りに来い。って、それだけ言って奥の部屋に入ってったんだよね」






 ───




 そのころ城下街では──

 雨が降り出したので、店前の道具を中にしまうアドルフがいた。

「……」

 そして彼は道具をしまう片手間に、一枚の羊皮紙を手に持ち眺めている。




 ◇◇◇



 農具は少年から…


 そしてこれは、私からの依頼です。


《 悪党から宝を守るための武器 》


 ──それを作って頂きたい。


 期限は定めないが、なるべく急いだ方がいいでしょうね。


 Claud─Michel・Geofrroy・de・Bourgeat



 ◇◇◇



 アドルフはその文字をゆっくりと目で追う。

 レベッカに読み書きを教わったおかげで、彼は周囲の職人仲間には珍しく識字ができるのだ。

「……」

 羊皮紙を裏返すと、そこには細身で長い刃の剣が、白い柄と剣帯とともに描かれていた。

「……っ」

グシャ…ッ

 顔をしかめたアドルフが、羊皮紙を握りつぶす。

 そして農具の製作に取りかかるため、分厚い鉄を棚から抜き出し、彼は火をおこす用意を始めた。







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