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略奪貴公子
第20章 揺れる想い



 彼と──


 彼と会ったのは、たぶん、偶然。


 ときめきとは無縁になったはずのわたしに、偶然舞いおりた出会いだった。



 この公爵家に嫁いできたまさにその夜

 外の異変に気がついて暗闇の庭に目を凝らせば、そこには花壇に身を潜めた彼がいた。

 わたしは無意識に、衛兵から彼をかくまってしまって…翌朝、彼が怪盗だったことをメイドの話で知る。

 けれど、その怪盗はわたしの前に堂々と正体を明かしてやってきた。

 フランスからやって来た伯爵として──

『 またお会いしましょう…公爵夫人 』

 すれ違いざまの囁きがもたらした得たいの知れない危険な予感を、今でも覚えている。



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