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略奪貴公子
第24章 怪盗の宝


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 エマの言ったとおり、割られた窓ガラスの修復は夕刻までには終わっていた。

 ディナーが終わって湯浴みをすませたレベッカ。

 寝着姿の彼女は椅子に座って、ベッドのしたくを整えるメイドの様子を見ている。

「ねぇ、あなた」

「はいっ、何でしょうか奥様?」

「いつもありがとう」

「い、いえ……//」

 声をかけられたその若いメイドは、レベッカからの労いを受けて、照れを隠すように頭を下げた。

「ごゆっくりお休みくださいませ」

「おやすみなさい」

 ベッドを整え、部屋の明るさを調整したあと、いつもの挨拶を残してメイドは出ていった。

 レベッカは椅子に座ったままだ。

 暗くなった自分の部屋の様子を眺める。

 左手の壁際に、ドレープの垂れ下がった、シルクのシーツをあしらったベッド。その奥にはクローゼット。

 自分が座っている右手側には、本棚とタンス。

 初めてこの部屋に入ったときとそれはあまり変わっていないが、唯一そこには、もともとなかったものが飾られていた。

 ──それはレベッカの肖像画。

 結婚式のドレス姿で、背中を見せて顔だけをこちらに向けた額(ガク)のなかの彼女は、優しい微笑みを…椅子に座るレベッカに向けていた。

 その肖像画は御抱え画家の傑作だった。

 みなが口を揃えて、描かれたレベッカの美しさを讃えたものだ。

「クスッ…、変な顔」

 だけどこうして見ていると……

 絵の中の微笑みに違和感しかない。

「そんなに複雑な顔しないでよ…」

 絵の中で微笑む公爵夫人に、そんな言葉をかけてしまう。

「人はあなたを幸せ者だと言うのよ?」

 祝福された結婚

 周囲が望んだ契約

 ──だが彼女は幸せより喜びに憧れた。

 女としての悦びを教えられたあの日から…。だから、幸せを捨てる覚悟はできている。

 …彼女は立ち上がり、クローゼットから外出用のドレスを出した。


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