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略奪貴公子
第25章 Epilogue──1
──…
午前の賑かな繁華街。
商店や飲食店が立ち並ぶこの通りを、息を切らして走り抜ける女性がいた。
彼女の目的地までもう少し──。道行く人にぶつかっては、何度も丁寧な謝罪を繰り返している。
早く、早く知らせないと…!
とにかく急ぐ彼女は、目的の店の前で立ち止まった。
手前の壁には商品がいくつか掛かっているが、そこに人影は見当たらない。
「…ハァ…ハァ…ハ…」
乱れた呼吸で店内を見渡し、奥へと続く扉を見つけた彼女は、迷わずそこへ踏み込んだ。
バタンッ
「──アドルフ様!!!」
「…っ…!?は? …──って、あちっ!」
扉の奥は本格的な鍛冶場だった。
パチパチと火花を散らす釜戸の横で、真っ赤な鉄を叩いていたのはアドルフである。
突然大声をあげて部屋に入ってきた彼女に驚き、油断したアドルフは熱くなった金具を焦って手放した。