この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
略奪貴公子
第26章 Epilogue──2
──…
それからひと月が過ぎ去った。
季節はすっかり夏となり、雲ひとつない空で、人々は突き刺さるような太陽の明るさの中で過ごしていた。
この気候ではほとんどの作物が暑さで育たない。
だから人々はオリーブ畑の手入れに加え、アーモンドやブドウ畑での作業に勤しんでいた。
それは毎年のことである。
ドイツであっても、フランスであっても…。
「伯爵夫人……、伯爵夫人…っ
──レベッカ様?」
「 わたし…?…あ、そうでした」
「私共はここで失礼いたします」
「わかりました、お気をつけて…っ」
客人の応対を終えて、若き伯爵夫人は部屋に戻った。
ただでさえ不得手な外国の言葉。それにくわえ、ついこの間まで " 公爵 " 夫人だった彼女には、いまだに戸惑う場面である。
疲れを感じて部屋の扉を開けたそこでは、付き人のレオが片付けの最中だった。
「客人は帰られましたか」
「ええ。その…なんとかお相手は務まったかと思います」
「では私は退室しますから、奥様は部屋でおくつろぎ下さい。またこちらは、今朝がたご所望だった書物です」
「まぁありがとう、助かります」
彼女が戻るやいなやテキパキと作業を切り上げるレオは、最後に本をいくつか差し出した。