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略奪貴公子
第26章 Epilogue──2



 ──…



 それからひと月が過ぎ去った。

 季節はすっかり夏となり、雲ひとつない空で、人々は突き刺さるような太陽の明るさの中で過ごしていた。

 この気候ではほとんどの作物が暑さで育たない。

 だから人々はオリーブ畑の手入れに加え、アーモンドやブドウ畑での作業に勤しんでいた。

 それは毎年のことである。

 ドイツであっても、フランスであっても…。





「伯爵夫人……、伯爵夫人…っ
 ──レベッカ様?」

「 わたし…?…あ、そうでした」

「私共はここで失礼いたします」

「わかりました、お気をつけて…っ」

 客人の応対を終えて、若き伯爵夫人は部屋に戻った。

 ただでさえ不得手な外国の言葉。それにくわえ、ついこの間まで " 公爵 " 夫人だった彼女には、いまだに戸惑う場面である。

 疲れを感じて部屋の扉を開けたそこでは、付き人のレオが片付けの最中だった。

「客人は帰られましたか」

「ええ。その…なんとかお相手は務まったかと思います」

「では私は退室しますから、奥様は部屋でおくつろぎ下さい。またこちらは、今朝がたご所望だった書物です」

「まぁありがとう、助かります」

 彼女が戻るやいなやテキパキと作業を切り上げるレオは、最後に本をいくつか差し出した。


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