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略奪貴公子
第5章 キケンな訪問者
伯爵の来訪から、二十日ばかりが既に過ぎていた。
《 またお会いしましょう…伯爵夫人 》
あんなことを言われて警戒していたレベッカだが、何日も音沙汰がないので気が抜けてしまう。
怪盗である彼のたくらみも、わざわざ伯爵として会いに来た目的もわからない。
……それに
今のレベッカには、伯爵の件以上に、気を病むことが続いていた。
「やぁ、レベッカ」
「エドガー様…」
夜もふけたある日の公爵邸で、背後から呼び止められたレベッカは気のりしない様子で振り返る。
彼女を呼び止めたのは、エドガー公爵子息。第一夫人の子で、モンジェラ公爵家の嫡子(チャクシ)である。
歳はレベッカと同じ、十九だ。
父親ゆずりの整った顔立ちだが、どこか軽薄にもうつる笑みを今日もこうして向けてくる。
レベッカは彼が苦手だった。
「どうしてこんな時間に起きてるんだい?……そんな夜着にガウンを羽織っただけの薄着でさ」
「つい先ほど宮殿からの召集(ショウシュウ)があり、ベノルト様がお出かけになりました。そのお見送りで、わたしたちが…」
「あーそれでか。メイド達ともすれ違ったのは」
「……エドガー様も、遅いお帰りですね」
「まぁ俺は、街で、ちょっと息抜きをね」
「……」
この男……。
顔だけ似ていても、その性格は父親に似なかったらしい。身分を問わず女遊びばかりしている " 好色(コウショク) " だという噂は、本当のようだ。