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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート

 レベッカを目覚めさせたのはウグイスの鳴き声と、窓から漂う薔薇の香り。


ホー ホケキョ


 いつもいつも……なんて情緒ある朝だろうか。

 がっちがちに戸締まりされたベランダの窓。

 メイドのエマがその窓を開けると、音と香りの目覚まし時計が彼女を起こすという仕組み。

 昨日はなかなかベッドから出ようとしなかったレベッカも、今日は素直に身を起こした。

 昨日の朝──

 知らぬ間に布団を掛けられて、ベッドの中で綺麗に寝かされていたレベッカ。

 いったい何が起こったのか整理のつかない様子の彼女を、起こしにきたエマは不思議がった。

 だがそれについて尋ねてみても、レベッカは頬を赤くするだけで何も話そうとはしなかったのだ。

 少し混乱した様子で、今日はひとりにしてほしいと言うばかりのレベッカに……エマがそれ以上を追求することはなかった。



 そして迎えた今日。

「今朝は体調はいかがですか?」

「…ええ、ごめんねエマ。今日はもう平気です。心配しなくていいわ」

 昨日はろくに事情も話さず、エマには申し訳ないことをした……。

 と言っても

 事情なんて、話せるわけないのだが。

「て、天気がいいわね。外は暖かそう」

 レベッカは窓から射し込む陽射しに目を細める。

 その言葉を聞いて、エマの顔がパッと輝いた。


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