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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート

「そうですね!こんなに素敵な朝ですから、朝食は外のテラスで召し上がってはどうでしょう?」

「…テラス?」

 思わず反応を示したレベッカに、エマは笑顔で頷き返す。

「庭の一角に小さなテーブルがあります。冬は寒くて使えませんが…今日のような朝なら日差しも丁度良いかと!」

 ──どうしてエマの方がこんなにわくわくしているように見えるのだろう。もしかしたら、そのテラスは彼女のお気に入りの場所なのかもしれない。

「外でご飯を食べてもいいのね」

 そしてレベッカもまた、弾む思いを抑えきれずにいた。

 昔、…厨房に忍び込んで作った簡単なサンドイッチをカゴに入れて、飛び出した森で食べたランチ。

 それは、ここに来る前の懐かしい思い出だ。

 公爵家に嫁いでからは、広い部屋で召し使いたちに見られながらの食事ばかり……。

“ 館の外で、風にあたりながらの朝食… ”

 随分と久しぶりになる。うん、いいかもしれない。

「ええ、わたしも今日はそこで食べたいです!準備してくれる?」

「はい!ではお食事はそちらに運ばせますね」

 昨日一日のモヤモヤとした思いを吹き飛ばすように、レベッカは緩やかなドレスに着替えて、エマに連れられて外のテラスへと元気よく向かった。





 なんて、楽しみにしたのが間違いだった



「…っ…嘘、でしょう…?」

 どうして……?

「どうして伯爵が…!」

 どうしてこの男(ヒト)がここにいるの──?

「──おや、公爵夫人」

「……っ」

 テラスに備え付けられた白いイスに腰掛けたまま、レベッカは咄嗟にエマに顔を向けた。

「?」

 エマは何も知らないようだ。

「こんな朝早くからお会いするとは、奇遇ですね」

 奇遇……ですって?

 ──そんなわけない!!


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