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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート

 賑やかな通りをゆっくり進み、街の風景を満喫(マンキツ)する。

 そのうちに、今度は道行く人の数が減っていった。

「そろそろいいか──」

 人混みをぬけると、クロードは再び馬に跨がり、街から離れて山道へと駆けて行った──。

 道の周りを木々が囲う。

 山道はしだいに上り坂となる──。

 レベッカが落ちてしまわないように、クロードは片腕で彼女をさりげなく包む。

 そしてレベッカは…

...トクン

 胸の奥が不用意に、音をたてるのを感じていた。



 地面の起伏がでこぼこと激しくなる。

 しばらく行くと坂道が終わり、道からそれて、茂(シゲ)る木の蔦(ツタ)をくぐり抜けた。



「ここ、ですか…?」


「ここです」


 馬が止まったので顔をあげた彼女が見たのは、円形の原っぱに咲きわたる…


「……紫色の花」


 レベッカは目を細めた。


“ このお花は…… ”


「──スミレ、です」


 クロードは馬から降りて彼女の手を引く。


「…っ…わ」


 ぐらりと前にバランスを崩したレベッカを、彼が自身の胸で受け止めた。


 そのまま彼女の身体を抱えたクロードは、菫(スミレ)の中へ足を進め、そっとレベッカを座らせたのだった。




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