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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート

 悔しいけれど食べ物に罪はないから、小さな歯型を付けて食べ進める。

「あ、なたは、食べないのですか?」

「私は後で頂きますよ。あなたの食べかけをもらえるのであれば、今すぐ噛じってみたいですがね」

「…// 駄目です、これはあげられません」

「残念です。では気にせずゆっくり召し上がりください。馬はこのまま歩かせますから、気になる店があれば声をかけてもらえますか?」

「…………、ふぁい」

 リンゴを噛じりながらだったから、淑女(シュクジョ)にあるまじき気の抜けた返事が出てしまう。

 それが、彼に対して気を許し始めた表れのようで……ますますレベッカは不服に思った。

“ ああ…でも、少し楽しいわ ”

「……あそこのお店が気になります。近くに寄ってもよろしくて?」

「異国の織物が並んでいますね。見てみましょう」

「面白い…」

「……」

 不服に思いつつ、同時に彼女は笑っていた。

 少しばかり歯を見せるこの笑い方は、本当なら人前でしてはいけないものだ。貴族の女として…夫人として。

 そういうものなのだが、今だけは、彼の前においては、許される気がした。

 クロードは一瞬だけ驚いた目をしていたけれど、すぐに余裕たっぷりの微笑みに変わる。ふっと口端をあげるその表情には、やはり太刀打ちできそうになかった。




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