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略奪貴公子
第10章 夫人が化ける夜

 部屋の一角、机の上の置き時計が、レベッカの灯した蝋燭に照らされて、使用人が眠りについたことを彼女に知らせた。

「…わたし」

 彼女は自分自身に問いかける

 本当に…これでいいのかと。

 こんなことをしても許されるのかと。

 そしてバルコニーへ視線を向けた。その窓は、いつものように鍵をかけられてはいなかった。

『 大丈夫、あなたは部屋で待っていればいい 』

 そうすれば彼が迎えに来る

『 眠っていても構わないが…窓の鍵を開けるのを、お忘れなきよう 』

 だから彼女はこうして開けた

『 …では今夜、ふたたびお会いしましょう 』

 ──彼は本当に来るのだろうか

「…わたし、クロードを待っているのね」

 待ってはならない相手だとわかっているのに…。

 レベッカの持つ蝋燭の灯りが揺れ動き、彼女はそれを机に置いた。そして、風に揺れるレースカーテンの向こう側を、深刻な顔で見つめてしまう。

──ユラリ...

「っあ…」

 突如、そこに人影が映り込んだ。

 その人影は、部屋の様子を伺うように中をぐるりと一瞥(イチベツ)し、そして視線を隅に立つレベッカへとまっすぐ向ける。

 音をたてないようゆっくりと──窓が静かに開けられる。

「クロード…」

「──ずっと起きていたのですか?」

 十分でない明るさの部屋で、二人は互いの姿を確認した。


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