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略奪貴公子
第10章 夫人が化ける夜
「クロード、わたし本当に…」
「時間はあまりない」
「──…」
まだ迷いがあるレベッカの言葉は遮られた。
大きな声は出せない。クロードは控えめに囁く。
「すぐに、準備をして参りましょう」
するとクロードの合図に応えたかのように、バルコニーにもう一人、別の男が現れた。
その男はレオ。クロードの付き人。
いつもの無表情を顔に浮かべて、レオは彼女の前でぴたりと止まった。
「…?」
「──では、急いでご支度を」
レオがぶっきらぼうに言い告げる。
その後ろではクロードが不敵な笑みを浮かべた。
「…夫人が化ける時間ですよ。今夜の舞踏会では、私たちは素性を隠します」
それは私たちだけではなく参加者の全員が…。家名を答える必要すらない。
クロードが舞踏会の内容を説明すると、その傍らでレオは自分の荷物からドレスを一着取り出した。
「レベッカ様のお召し物はこちらです」
「わかりましたわ…。では、その、少し時間を頂けますか?」
「何の時間でございますか」
「…?もちろん着替える時間です」
「お着替えと化粧は、私が手伝わせて頂きます」
「──え!あなたが…っ??」
男の方に着替えを手伝われたことが、かつてなかったレベッカは…
「それはちょ、ちょっと…っ」
十代の乙女らしく恥じらいを隠せない。
「──時間がありませんので」
「……ッ」
「失礼いたします」
しかしレオは表情を変えないまま、強引に支度にとりかかった。
こうなってしまうとその無表情に…焦るレベッカへのからかいがこもっているようにさえ見えてしまう…。
そんな二人を横目で見守るエメラルドグリーンの美麗な瞳が、ますます羞恥をあおるというもの。
クロードは長い脚を優雅に組んで、椅子のひとつに腰掛けた。