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二重生活
第14章 夢のあと
空がほんのりと赤く色づいていた。
窓を開け、もう一度空を眺める。
たくさんの色が生まれ、混ざりあい、ゆるゆると広がっていく……。
空に放たれる光芒が美しかった。
雲間から射す光は、「天使の梯子」と呼ばれるという。
柔らかくて儚い、一瞬の奇跡だ。
だけど今の鞠香は、あの先に夢のような場所があったとしても、登ってみたいとは思わないだろう。
それほど、ここは心地よかった。
離れがたくて、息をするのも忘れて、じっと腕の中に収まる。
けれど、無情にも時は過ぎていく……。
「帰らなきゃ」
昨晩「花見のあと、もう一度家で飲み直すことになった」と連絡したら、「明るくなったらタクシーで帰っておいで。気を付けて」と返信があった。
何も疑っていない、親心のようなものすら感じるメール。
雄一が出社する前に、帰って家事をしなくては……
ポピーにも寂しい思いをさせてしまった。
外まで送ると言う言葉を断って、通りへ出る。
初めての朝帰り。
いつものように朝が眩しいと感じなかった。
朝日は現実を突きつける。
彗君と離れてみると、そこは知らない土地で、ひとりぼっちだった。
罪悪感と、底知れない不安感。
さっきまでの幸福感は、しゅんと萎んでいた。
窓を開け、もう一度空を眺める。
たくさんの色が生まれ、混ざりあい、ゆるゆると広がっていく……。
空に放たれる光芒が美しかった。
雲間から射す光は、「天使の梯子」と呼ばれるという。
柔らかくて儚い、一瞬の奇跡だ。
だけど今の鞠香は、あの先に夢のような場所があったとしても、登ってみたいとは思わないだろう。
それほど、ここは心地よかった。
離れがたくて、息をするのも忘れて、じっと腕の中に収まる。
けれど、無情にも時は過ぎていく……。
「帰らなきゃ」
昨晩「花見のあと、もう一度家で飲み直すことになった」と連絡したら、「明るくなったらタクシーで帰っておいで。気を付けて」と返信があった。
何も疑っていない、親心のようなものすら感じるメール。
雄一が出社する前に、帰って家事をしなくては……
ポピーにも寂しい思いをさせてしまった。
外まで送ると言う言葉を断って、通りへ出る。
初めての朝帰り。
いつものように朝が眩しいと感じなかった。
朝日は現実を突きつける。
彗君と離れてみると、そこは知らない土地で、ひとりぼっちだった。
罪悪感と、底知れない不安感。
さっきまでの幸福感は、しゅんと萎んでいた。