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二重生活
第15章 スピカ
国道246号を少し入ったところに、ポピーとよくお参りするお寺があった。
ひとつ向こうの通りの喧騒が嘘みたいに、静かで心休まる場所だった。
浅草寺の雷門を彷彿とさせる、赤い山門。
そこに立つのは、雄々しい仁王様。
そして、前庭には立派な枝ぶりの桜が、美しく咲き誇っていた。
「なんか、遠くに旅行に来たみたいな気になるね」
彗君が桜を見上げながら言った。
「私も初めて来たときそう思ったよ」
「行きたいね、旅行。温泉とか」
「温泉いいね、行きたいなぁ……。ずっと行ってないもの」
「そうなんだ? ちょっと嬉しいかも……」
「どうして?」
「ううん。何でもないス……」
「ふふ。なにそれ。変なの」
「行こうね、今度」
本当に……行けたらどんなに楽しいだろう。
こんなに馴染みのある場所ですら、彗君と一緒だと彩りに満ちる……。
「こんばんは」
その時、散歩の途中でたまに挨拶を交わす女性とすれ違った。
雄一の顔を知っているわけではないのに、ドキリとした。
ひとつ向こうの通りの喧騒が嘘みたいに、静かで心休まる場所だった。
浅草寺の雷門を彷彿とさせる、赤い山門。
そこに立つのは、雄々しい仁王様。
そして、前庭には立派な枝ぶりの桜が、美しく咲き誇っていた。
「なんか、遠くに旅行に来たみたいな気になるね」
彗君が桜を見上げながら言った。
「私も初めて来たときそう思ったよ」
「行きたいね、旅行。温泉とか」
「温泉いいね、行きたいなぁ……。ずっと行ってないもの」
「そうなんだ? ちょっと嬉しいかも……」
「どうして?」
「ううん。何でもないス……」
「ふふ。なにそれ。変なの」
「行こうね、今度」
本当に……行けたらどんなに楽しいだろう。
こんなに馴染みのある場所ですら、彗君と一緒だと彩りに満ちる……。
「こんばんは」
その時、散歩の途中でたまに挨拶を交わす女性とすれ違った。
雄一の顔を知っているわけではないのに、ドキリとした。