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二重生活
第16章 lockset
雄一から、今夜は帰れないと連絡が入ったのは、ちょうどマンションに戻りかけたころだった。
二人とも、やっと離れがたさに踏ん切りをつけたところだったけど、

「だったら帰したくない……ポピーを連れて家いこ」

彗君は言って、今、こうして電車に揺られている。

明日は休みで会えないから……。
たった1日だとしても、それは絶望的に寂しい1日になることはわかっていたから。
とにかく、少しだって離れていたくなかった。

満員電車で、守ってくれる腕に寄り添いながら感じるのは、幸せな気持ちだけだった。
何かが、確実に麻痺していっている気がした。

「くっついて寝ようね」

彗君が耳元で囁く。また寝かせてあげられないかもしれないけど、とも。



彗君の部屋は、まだ二度目なのにとても居心地がよくて、なんだかほっとした。
ポピーもベッドで丸くなると、すやすやと寝息をたてはじめる。

「これ、タオル使って。先シャワー浴びておいで」

甘い声が、そう言った。
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