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二重生活
第20章 GW
風薫る季節になった。

すぐそこに迫ったGWを心待ちにしながら、彗君の仕事明けに部屋へ行ったり、雄一が帰宅するまでの時間一緒にポピーの散歩をしたり、そんなふうに過ごしていた。


雄一は、相変わらず忙しかったし、鞠香の変化に気づいていないようだった。
夜中、ベッドに入ってくる気配に身を硬くしていたけれど、誘ってくることもなかった。
それでも、普通に話しながら二人で朝食を食べるのだ。


鞠香は、実家にいた中学生のころの恋愛を思いだし、今はまるであの頃みたいだと思った。

恋愛になんて興味ありませんみたいな顔をして、子供らしく振る舞っていたあの頃。
彼を家族に紹介できず、夜中会いたくなったときはこっそり抜け出して公園で話した。
会える時間は制限されていたけど、何とか時間を見つけては、お互いを知ろうとした。

一つ一つ段階を踏んで、ゆっくり近づいていく距離にドキドキした。


今になって思う。
だからこそ、あの想い出は、淡いときめきを保って胸の片隅にあるのだと。


自由すぎると、すぐに一緒に暮らしたり、会いたいだけ会ったり、歯止めがきかなくなるのだと思う。

甘い蜜を、あっという間に吸い付くしてしまうのだ。
その味も、ありがたみもわからないくらいに。



別れたあとに込み上げる恋しさを噛み締める時間は、思いを強くする大切な時間なのだと思う。




改札前で抱き合うカップルを見て、その離れがたさに共感し、
自分もきっとあんな目で彗君を見つめているのだろうと思った。




もうすぐ、ゴールデンウィーク。
彗君の二日間を独り占めできると思うと、待ち遠しいのに今の気持ちをまだ味わっていたいような、不自然な気持ちになった。

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