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二重生活
第20章 GW
ポピーの様子を見に行くと、温泉からあがって、ドライヤーをかけてもらっているところだった。


こっちに気づいてパタパタと尻尾を振ったあと、また気持ちよさそうにうっとりと寛いでいる。

「あのこ、大物……」

「だね、イイコ、俺らもそれじゃー二人で楽しもっか」

「そうね」

売店で日本酒を選んだり、竹林と中庭の池を望むテラスで風を感じたりしながら、夕食までの時間を過ごした。

夕食は、部屋でポピーも一緒にとることができた。犬用のフルコースは、スープやデザートまでついていて、ポピーも大喜びで、鞠香は嬉しくなった。

すべて、彗君が喜ばせようと考えてくれたこと。
とても、素敵なプレゼントだった。


「なんかさ、めちゃくちゃ大きな露天があるみたいだよ。混浴だけど、行ってみる?」

「うん、せっかくだから行ってみたいな」

「よし。でも、鞠香さんはタオル二重ね」

「……ハイ」

仲居さんが新しく用意してくれた、違う柄の色浴衣を手にして、ポピーを預けて露天へ向かった。

「すごい、至れり尽くせりだね。こんなふうに色々考えてくれて嬉しいな」

「今日は鞠香さんのための1日だから。忘れられない1日にしたくてさ」

「うん、忘れられない1日になってるよ。ありがとう」


灯りの点る渡り廊下を歩いて、
「じゃあ中で。すぐお湯に肩まで入るよーに」そう言われ、脱衣場の前で一度別れた。



浴衣を脱ぎ、下着を外す。静かな脱衣場に響きそうなほど、高鳴る胸の鼓動。
何でこんなにいちいちドキドキしちゃうんだろう……

ちょうどお風呂から脱衣場へ入ってきた女性が、チラチラと幾度となく盗み見ていることにも気づかず、鞠香はタオルを言いつけ通り二重にして巻き付けた。

収まりきらない胸と、細い腕、スラリと伸びた脚は艶かしく白く、見た者は、バスタオルの中を想像せずにはいられないような、神秘の色香を放っていた。
まとめあげられた後れ毛がうなじにかかるラインは、女同士でも悩殺されてしまうほどの美しさで、女性は鞠香の後ろ姿を見送り続けていた。
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