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二重生活
第21章 encounter
昼夜問わず喧騒に満ちた新大久保。
それに比べて原宿は、昼間の賑やかさが嘘のように、深夜はシーンと寂しくて……
今日は、タクシーを使ってしまった。
マンションに着くと、雄一の車がちょうど入っていったところだった。
ドキン!
心臓が跳ね上がり、指先が冷たくなっていく。
こんな偶然も、私たちに縁がある証拠なのかな……。
素早く清算して、部屋へ急いだ。
もちろん、宅配ロッカーから取り出した荷物を持って。
部屋は、息絶えたように静かだった。
電気をつけて、お湯ができる間に部屋着に着替え、紅茶を淹れた。
(間に合った……)
呼吸を整えていると、雄一が帰ってきた。
鞠香は、慌ててヨガのポーズをとる。
「おかえりなさい」
自然な笑顔で言えたはずだ。
「ただいま。あれ? 沙織ちゃんと出掛けるのはやめたの?」
「うん、急にダメになっちゃったみたい……」
「せっかくの休みなのに残念だったな」
「うん」
今度は笑顔がひきつるのを感じた。
胃がキリキリと痛んで、心臓を突き上げる。
今夜は、帰ってきてよかったと思った。
「また、近いうち、食事でも誘ってみたらいいよ」
「ありがとう」
その時……
鞠香は見てしまった。
背を向けている雄一の表情が、
窓ガラスに映るのを。
雄一は、声色に反して、全く笑っていなかった。
窓の外の闇と同化する瞳が、瞬きもせず、そこに映っていた。
息を吹きかえしたリビングで、ポピーが楽しそうに走り回っていた。
それに比べて原宿は、昼間の賑やかさが嘘のように、深夜はシーンと寂しくて……
今日は、タクシーを使ってしまった。
マンションに着くと、雄一の車がちょうど入っていったところだった。
ドキン!
心臓が跳ね上がり、指先が冷たくなっていく。
こんな偶然も、私たちに縁がある証拠なのかな……。
素早く清算して、部屋へ急いだ。
もちろん、宅配ロッカーから取り出した荷物を持って。
部屋は、息絶えたように静かだった。
電気をつけて、お湯ができる間に部屋着に着替え、紅茶を淹れた。
(間に合った……)
呼吸を整えていると、雄一が帰ってきた。
鞠香は、慌ててヨガのポーズをとる。
「おかえりなさい」
自然な笑顔で言えたはずだ。
「ただいま。あれ? 沙織ちゃんと出掛けるのはやめたの?」
「うん、急にダメになっちゃったみたい……」
「せっかくの休みなのに残念だったな」
「うん」
今度は笑顔がひきつるのを感じた。
胃がキリキリと痛んで、心臓を突き上げる。
今夜は、帰ってきてよかったと思った。
「また、近いうち、食事でも誘ってみたらいいよ」
「ありがとう」
その時……
鞠香は見てしまった。
背を向けている雄一の表情が、
窓ガラスに映るのを。
雄一は、声色に反して、全く笑っていなかった。
窓の外の闇と同化する瞳が、瞬きもせず、そこに映っていた。
息を吹きかえしたリビングで、ポピーが楽しそうに走り回っていた。