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二重生活
第24章 眠り姫
手を繋いで弾むように歩く沙織たちの後ろを、雄一と並んでついていった。
雄一側の右手に、バッグを持って。



結局、家で飲みなおすことになってしまった。

「ポピーがいるから帰らないといけないしな、家に来てもらうのが妥当なんじゃないか?」

その言葉に頷くしかなかったのだ。


お店なら先に帰ることもできたけど、家でとなると、もう逃げ場はなかった。

「疲れたら、先に寝てもいいからな」

優しく言ってくれても、鞠香の不安と苛立ちは消えなかった。
リョウ君を家にあげるのは嫌だった。
その理由を言えない自分も。


家に帰りたくない………。
彗君の部屋に帰りたい。
あの笑顔に触れて、力強い腕に抱かれたかった。
何もしなくていい、話さなくていい。
ただ、彗君の存在を感じたかった。



「すげー。なんか、鞠香さんちって感じですね」

「それわかる~」

はしゃぐ声には触れず、ポピーの世話をして、輪に入らないようにしていた。

ただただ、何事もなく時間が過ぎますように。それだけを願って。






だけど……鞠香はあとあと、思い知らされることになる。


あの時、きちんと断るべきだったのだと。
あの人を、入れてはいけなかったのだと。




セキュリティ万全の、どこよりも居心地がいい安全な場所だった。




このリビングは。




世界で一番、安心できる場所だったのに……。




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