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二重生活
第1章 鞠香
職業欄に「主婦」と書くことに、何の違和感も持っていなかった。
大きな窓から陽が射し込むリビングで、録りためたドラマを見て、本を読み、愛犬のポピーと遊ぶ。
音楽を聴きながら、花に水をやり、料理の下ごしらえをして、グラスを磨く。
趣味はほとんど家のなかで満喫できたし、綺麗に片付けた部屋を眺める満足感は格別だった。
丁寧に家事をしていたら、1日なんてあっという間に終わる。
時に、友達とランチをしたり、美容院やエステへ行ったり、オペラやミュージカルを観劇しに出向くこともあったけれど、鞠香の日常の99パーセントは、この部屋で完結していた。
11歳年上で会社を経営している夫の雄一は多忙だったけど、充分すぎるほどの生活費と環境を与えてくれていたので、
「鞠香は勝ち組だよね」と羨ましがられることも多かったし、実際鞠香もそう感じていた。
毎日は穏やかで、平和で
ここは、世界で一番、安心できる場所だった。
…………彼と、出逢うまでは。
大きな窓から陽が射し込むリビングで、録りためたドラマを見て、本を読み、愛犬のポピーと遊ぶ。
音楽を聴きながら、花に水をやり、料理の下ごしらえをして、グラスを磨く。
趣味はほとんど家のなかで満喫できたし、綺麗に片付けた部屋を眺める満足感は格別だった。
丁寧に家事をしていたら、1日なんてあっという間に終わる。
時に、友達とランチをしたり、美容院やエステへ行ったり、オペラやミュージカルを観劇しに出向くこともあったけれど、鞠香の日常の99パーセントは、この部屋で完結していた。
11歳年上で会社を経営している夫の雄一は多忙だったけど、充分すぎるほどの生活費と環境を与えてくれていたので、
「鞠香は勝ち組だよね」と羨ましがられることも多かったし、実際鞠香もそう感じていた。
毎日は穏やかで、平和で
ここは、世界で一番、安心できる場所だった。
…………彼と、出逢うまでは。