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二重生活
第1章 鞠香
「29歳」
まわりは、面白いくらい、半分に分かれている。
結婚している友達と、していない友達。
去年が、一番結婚式に呼ばれることが多かった気がするけど、
今年はすでに「しばらく結婚はしない」「35歳までに」という声を、もう幾度となく聞いていた。
30歳を前にして、女はやっぱり考えてしまうものなのかもしれない。
ティーンから卒業する20歳、そして、三十路という新たな路へ入る30歳。
いよいよ、若さだけは物事は進まなくなり、現実を見なくてはいけなくなる歳。
ひとつでも確かなものを手にしたくて、だけどそんなものはなかなかないことを知っている。
合コンの数は減るのに、小さなシミやくすみのようなものが増えている気がして、お酒も弱くなって、深夜には眠くなって……。
鞠香は、今だから思う。
結婚をしてよかったと。
プリンセスラインのラブリーなウェディングドレスを纏った23歳の鞠香を、まだ結婚式慣れしていなかった友達は、しきりに感激し、誉め称えてくれた。
鞠香の結婚式は式場の撮影も入り、道行く人も皆、綺麗だと言ってくれた。
いつも遊んでいたメンバーからの誘いは減ったし、男友達も離れていったけど、雄一は優しくて、とても大切にしてくれたので不満はなかった。
ただ……ひとつだけ、夫婦の間には今も話題にしないタブーがある。
子供のことだった。
二年経っても恵まれず、念のためと産婦人科を訪れると、雄一は無精子症で子供は望めないとの診断が下された。
あの時の雄一の落胆ぶりは見ているほうが辛くなるほどで、鞠香はショックを受けることすら、ちゃんとはできなかった。
二人で生きていくと決めたけど、その頃から夜の営みは減っていった。
もう、どれくらい、していないんだろう……。
まわりは、面白いくらい、半分に分かれている。
結婚している友達と、していない友達。
去年が、一番結婚式に呼ばれることが多かった気がするけど、
今年はすでに「しばらく結婚はしない」「35歳までに」という声を、もう幾度となく聞いていた。
30歳を前にして、女はやっぱり考えてしまうものなのかもしれない。
ティーンから卒業する20歳、そして、三十路という新たな路へ入る30歳。
いよいよ、若さだけは物事は進まなくなり、現実を見なくてはいけなくなる歳。
ひとつでも確かなものを手にしたくて、だけどそんなものはなかなかないことを知っている。
合コンの数は減るのに、小さなシミやくすみのようなものが増えている気がして、お酒も弱くなって、深夜には眠くなって……。
鞠香は、今だから思う。
結婚をしてよかったと。
プリンセスラインのラブリーなウェディングドレスを纏った23歳の鞠香を、まだ結婚式慣れしていなかった友達は、しきりに感激し、誉め称えてくれた。
鞠香の結婚式は式場の撮影も入り、道行く人も皆、綺麗だと言ってくれた。
いつも遊んでいたメンバーからの誘いは減ったし、男友達も離れていったけど、雄一は優しくて、とても大切にしてくれたので不満はなかった。
ただ……ひとつだけ、夫婦の間には今も話題にしないタブーがある。
子供のことだった。
二年経っても恵まれず、念のためと産婦人科を訪れると、雄一は無精子症で子供は望めないとの診断が下された。
あの時の雄一の落胆ぶりは見ているほうが辛くなるほどで、鞠香はショックを受けることすら、ちゃんとはできなかった。
二人で生きていくと決めたけど、その頃から夜の営みは減っていった。
もう、どれくらい、していないんだろう……。