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二重生活
第5章 上書き
幸せの余韻か、ハーブティーの効能か、ぐっすり眠れた鞠香の肌は、翌朝今までになく潤っていた。
早朝に出社していった雄一が、「早いからまだ寝ていていいよ」と言ってくれたことは、ありがたくて申し訳なくて、でもどこか、顔を見られずほっとしていた。
私は、自分が思うよりずっと、嘘が下手なのかもしれない。
今もそう。
髪を丁寧に内巻きにしてハーフアップにし、時間をかけてお化粧している。
夜のうちに準備しておいた洋服に袖を通して、鏡に向き合うと、昨日よりずっとシャンとした姿が映っていた。
これは、きっと、彗君に見てほしいから……。
可愛いと思ってほしいから。
胸がいっぱいで食事は喉を通らないのに、力がこんこんとわいてきて、朝陽がキラキラ眩しく感じて……。
潤滑に歯車が動き始めたような、新しい朝に思えた。
早くお店に行きたい。
あの瞳、あの声、あの笑顔に触れたい。
何をしていても、結局その考えに行き着いていて、(彗君……)心が、無意識に呼び掛けてしまうのだった。
早朝に出社していった雄一が、「早いからまだ寝ていていいよ」と言ってくれたことは、ありがたくて申し訳なくて、でもどこか、顔を見られずほっとしていた。
私は、自分が思うよりずっと、嘘が下手なのかもしれない。
今もそう。
髪を丁寧に内巻きにしてハーフアップにし、時間をかけてお化粧している。
夜のうちに準備しておいた洋服に袖を通して、鏡に向き合うと、昨日よりずっとシャンとした姿が映っていた。
これは、きっと、彗君に見てほしいから……。
可愛いと思ってほしいから。
胸がいっぱいで食事は喉を通らないのに、力がこんこんとわいてきて、朝陽がキラキラ眩しく感じて……。
潤滑に歯車が動き始めたような、新しい朝に思えた。
早くお店に行きたい。
あの瞳、あの声、あの笑顔に触れたい。
何をしていても、結局その考えに行き着いていて、(彗君……)心が、無意識に呼び掛けてしまうのだった。