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二重生活
第7章 rose
ドアホンのモニターいっぱいに、直人君の顔が映っていた。
「鞠香さーん!!!!」
にこにこと手を振っている。
「ふふ、近い……」
思わず頬が緩んだ。
ロックを開けて玄関で待つ間を、こんなに楽しみに待ちわびたのは初めてかもしれない。
「こんばんは~! 入り口からここまですっげ~遠かったです。迷子になるかと思ったけど、この階にしかエレベーター止まらないようになってるんですね! 最上階だし、廊下もホテルみたいで、ほんとすっげ~!」
興奮ぎみに言う直人君に、彗君が苦笑いしている。
「いらっしゃいませ」
スリッパを勧めながらいうと、直人君が
「あれ~なんかお店バージョンの鞠香さんだ、もっとくつろいで下さいよ」と言い、
「彩名がいたら、また突っ込まれてたと思う」彗君が肩をすくめた。
そう、彩名ちゃんが、早朝からの撮影に呼ばれてしまい、結局三人で過ごすことになったのだった。
雄一は、それでもきっといいよと言うと思うけれど、何となく後ろめたくて、画面の履歴をそっと削除した。
「あ、鞠香さんこれ」
ケーキの箱を手渡される。
「わぁ、ありがとう! お料理のこと考えてたら、すっかりデザートのこと忘れちゃってて。見てもいい?」
「どうぞ」
それは、この前彗君が連れていってくれたティーサロンの、バラとクリームチーズのレアチーズケーキだった。
食べたいって言ったの、覚えててくれたんだ……。
「嬉しい……。ありがとう」
彗君が笑ってくれる。
一人ぼっちの夜が、こんなにも素敵な夜になったことが純粋に嬉しくて、胸がいっぱいになった。
「鞠香さーん!!!!」
にこにこと手を振っている。
「ふふ、近い……」
思わず頬が緩んだ。
ロックを開けて玄関で待つ間を、こんなに楽しみに待ちわびたのは初めてかもしれない。
「こんばんは~! 入り口からここまですっげ~遠かったです。迷子になるかと思ったけど、この階にしかエレベーター止まらないようになってるんですね! 最上階だし、廊下もホテルみたいで、ほんとすっげ~!」
興奮ぎみに言う直人君に、彗君が苦笑いしている。
「いらっしゃいませ」
スリッパを勧めながらいうと、直人君が
「あれ~なんかお店バージョンの鞠香さんだ、もっとくつろいで下さいよ」と言い、
「彩名がいたら、また突っ込まれてたと思う」彗君が肩をすくめた。
そう、彩名ちゃんが、早朝からの撮影に呼ばれてしまい、結局三人で過ごすことになったのだった。
雄一は、それでもきっといいよと言うと思うけれど、何となく後ろめたくて、画面の履歴をそっと削除した。
「あ、鞠香さんこれ」
ケーキの箱を手渡される。
「わぁ、ありがとう! お料理のこと考えてたら、すっかりデザートのこと忘れちゃってて。見てもいい?」
「どうぞ」
それは、この前彗君が連れていってくれたティーサロンの、バラとクリームチーズのレアチーズケーキだった。
食べたいって言ったの、覚えててくれたんだ……。
「嬉しい……。ありがとう」
彗君が笑ってくれる。
一人ぼっちの夜が、こんなにも素敵な夜になったことが純粋に嬉しくて、胸がいっぱいになった。