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二重生活
第7章 rose
廊下を抜けてリビングへ案内すると、

「うわー! 俺んちの何倍あるんだこの部屋! この無駄に真ん中にあるキッチンとか、始めて生で見たわー」

直人君は、犬のポピーが驚くほど走り回っていた。さすがにこの感じにも慣れてきたけれど。

彗君は、ポピーを抱き上げると「可愛い」と頬擦りし、始めての人が苦手なポピーも彗君の顔をペロペロと舐めていた。

「ポピーもミルクティ色なんだね。トイプー?」

「マルプーなの。トイプーとマルチーズのミックス。そう言えばほんと、ミルクティみたいな色ね」

ふふっと笑って、小さな丸い頭を撫でる。

それから、よく冷えたシャンパンと、ピクルスなどの前菜を出した。

「すっげー! 出ましたドンペリ! 待って鞠香さん! 俺、つぶやかせていただきます!」

今度はパシャパシャと写真を撮る直人君に、彗君と顔を見合わせて吹き出した。
こんなにも、おもてなしの甲斐がある男の子も珍しいと思う。

ケータイに没頭して静かになったところで、料理を運び、シャンパンを開けた。


温野菜に醤油風味のヴィネグレットソースをかけたサラダと、炙ったホタテとトマトのカルパッチョ。
ムール貝の白ワイン蒸し。
サフラン風味の牡蠣のフリカッセ。
新じゃがとチキンのローズマリー風味のオーブン焼き。
ズッキーニとラヴィオルのグラタン。
牛ほほ肉の赤ワイン煮込み。

おいしいといいな……
次々と運ぶと、二人は感嘆の声をあげて、うまいうまいとどんどん食べてくれた。

「沙織さんに感謝だわー! なんて素敵な人を店に紹介してくれたんだろー」

直人君の言葉に、ほんとだよねと彗君が答えている。
とても嬉しかった。
沙織にも、本当に感謝していた。
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