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二重生活
第10章 キスの痕
優しく髪を撫でられながら、唇を味わわれる。
歯を、歯茎を、唇の裏を、頬の裏を、舌先が舐めていく。
そのたび、鞠香は腰をくねらせ、太ももを擦り合わせなければならなかった。

「感じてる鞠香さん、色っぽい……」

「だっ……て……彗君の……キス……気持ちよ……すぎ……て……」

ハァハァと吐息を吐きながら見上げる鞠香に、またキスの雨が降ってくる。

胸元のリボンを外され、体がビクンと硬直する。

「みんなが、鞠香さんのこと好きになってしまう気持ちはわかるよ。でも、他の誰にも触れさせなくないよ……」

「……ごめんなさい……さっき……リョウ君に……」

「またすぐ謝る……。大丈夫……。全部忘れさせるから」

「うん……」

さらされた乳房についたキスマークの跡。
その傷痕に、舌先が触れる。

「上から、キスマークつけ直していい?」

彗君の瞳が、燃えるように光っていた。

「つけて……。全身に……つけ……て……」

乳房に走る甘い痛み。
彗君がもたらす痛みなら、それは必要とされていることを実感できる喜びになる。

「ごめん、嫉妬丸出しで俺、すげーカッコ悪いけど、もうしないから……」

優しい腕、また何度もされるキス。
乱暴なほどに激しく、だけど大事にされているのがわかる……蕩けてしまいそうなキス。
嫉妬の炎になら、焼け尽くされてもいいと思った。
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