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第9章 【蜩（ひぐらし）～華のしずく～】

「この城へ参りしより一年、そなたは本当によう仕えてくれました。これより後は、私の分までこの子を可愛がってやって下され。この子ためにも生きることをまず考えての」
　珠子の方はこの時、十六歳。城主佐竹信成の正室となってわずかに一年足らずではあったが、その若さを感じさせぬほどの存在感があった。
　珠子の方が再びおふうに向き直った。次の瞬間、おふうは珠子の方に抱きしめられていた。