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あなたに抱かれたい
第10章 夫のいない生活

『ああ…今月も空振りだったわ…』

妊娠を望む久美子は排卵日にあわせて夫の拓哉に中だしセックスをしてもらったというのに、手元の妊娠検査キットは無情にも妊娠していなかったことを告げていた。

そして検査をした数日後には、嘲笑うかのように生理が始まる。

「また来月、拓哉さんには頑張ってもらわなきゃ…」

毎晩のように精液を放出すると、子種が薄くなり妊娠しにくいと聞いたこともあったので、本当は毎晩のようにセックスをしたいけれど週1で性交するようにしていた。

そして排卵前の10日前から夫には禁欲してもらい、なるべく濃い子種を子宮に浴びてもらうという努力もした。
しかし、そんな努力もむなしく妊娠しない。
もしかして久美子の体は妊娠しにくい体質なのかもしれない。
近々、タイミングを計って産婦人科を受診してみようと思っていた。

一方、夫の拓哉は、私生活のゆとりが仕事にも反映されていて、やること為すこと全てが順調で営業成績をぐんぐん伸ばしていた。
これほどまでに営業の才覚がある男を営業部の歯車のひとつに納めておくのは勿体ないと上層部なら誰しも考えるところだ。

今日も大口の契約をひとつまとめて、拓哉はノリに乗っていた。
会社のデスクに座って契約書をファイルに収めていると、上司に声をかけられた。

「篠塚くん、事業本部から呼び出しだ。
ゆっくりしているところ悪いんだが、至急本部室に出向いてくれないか」

「事業本部?はて、なんでしょう…
こんな末端の営業部員を直々に呼び立てるなんて…」

「またまたぁ!末端の営業部員だなんて謙遜を。
君は今や弊社になくてはならない営業のエースだよ」

とにかく、本部長を待たせてはいけないよ
急いで要件を聞きに行ってくれたまえ

その要件とやらを営業部長は内密に打診されていたのだろう、
少しだけ顔を曇らせながら早く行きなさいと拓哉の尻を叩いた。

拓哉はエレベーターに乗り込み、中の鏡で身だしなみを整えた。
事業本部からの呼び出しというからにはキャリアアップの辞令だろう。
もしくは他所の支社へ営業部長としての打診か…
これまでに失敗をしたことなどないので、降格人事なんてあり得ないだろうと、どんな辞令が待ち受けているのかとホクホクしながら上層階に足を踏み入れようとしていた

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