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あなたに抱かれたい
第10章 夫のいない生活

コンコンコン…

「営業部の篠塚でございます」

意気揚々と威勢の良い声を発して室内からの返事を待った。

「入りたまえ」

重厚で、いかにも役員という低音ボイスが入室を促してくる。

「フーっ…」

気合いを入れるために深呼吸して「失礼します」とドアノブに手をかけてドアを開いた。

室内を覗いて拓哉はギョッとなった。
そこには営業本部長を始め、人事部の本部長、事業計画本部の本部長と、本部長クラスが雁首そろえて拓哉を待ち受けていた。

一瞬、怯んでしまって入室の一歩が踏み出せない。

「おお!君が篠塚くんかい?
何をしておる、そんなところに突っ立っていないで入ってきたまえ」

事業本部長に促されて、場違いなところに来てしまったと心臓をバクバクさせながら、ソファーにふんぞり返る三役人の対面に歩みを進めた。

「かねてから君の活躍は耳にしているよ」

まあ、立ち話もなんだ。そこに掛けなさいと三人の役員たちの視線を痛いほど浴びながら拓哉は着席する。

「あの…ここへ呼び出されたのはどのようなご用件でしょうか?」

図々しいかと思ったが、ここに呼び出された用件を聞かないことには先に進めないと思った。

「君、営業能力に長けているそうだね?」

まるで面接のように三役人の手元にはマル秘と書かれた拓哉の成績表やら家族構成とか社内ファイルが配られている。

「今日も大口の案件をひとつまとめて来たそうじゃないか」

「いえ、チームとしての連携プレイですので、私一人の功績ではございません」

「ここには私たちしかいないんだ。、そんな謙遜はいらないんだよ。私たちはね、かねてから君をマークしていたんだよ」

「事業本部長の口ぶりだと、まるで叱責でも受けるのではないかと萎縮してしまうよな?」

もっと和気あいあいと話を進めていきましょうやと営業本部長が横やりを入れる。

「では、叱責ではないと?」

緊張して喉がカラカラだった。
目の前には飲料水のペットポトルが置かれていたが、飲んでも構いませんか?というお伺いを立てることさえままならなかった。

「君、新婚さんなんだって?」

人事本部長が拓哉のファイルに目を落として訪ねてきた。
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