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防音室で先輩に襲われて…
第12章 余韻
玄関のドアを閉めた瞬間、外の冷たい夜気がぱたりと遮断され、家の中の温もりが肌に染みてきた。
街灯の柔らかなオレンジが濡れたアスファルトを照らす様子が、窓ガラス越しにまだ目に焼き付いている。
乃ノ花は靴を脱ぎながら、傘を畳む指先が小刻みに震えているのに気づいた。髪の毛からぽたぽたと水滴が落ち、玄関マットに小さな染みを作る。
「遅かったわね」
リビングから母の声が響き、その奥では夕方のニュース番組が小さく流れている。
ソファに腰掛けた母は、手元の編み物を一旦止めて、ゆっくりと顔を上げた。表情には心配と、少しだけ苛立ちが混じっているのがわかった。
「びしょ濡れじゃない。大丈夫?傘、ちゃんと持っていかなかったの?」
「持ってたよ。ちょっとだけ雨が強くなって」
母はすぐに立ち上がり、洗面所からバスタオルを持って戻ってくると、乃ノ花の頭を包み込むようにして優しく、でも少し乱暴にごしごしと拭き始めた。
タオルの柔らかな感触と、母の体温が伝わってくるたび、乃ノ花の胸の奥が小さく疼いた。
「午前中は図書館にいたみたいだけど……その後はどこに行ってたの?」
スマホの位置共有機能。母はいつも、いつも見ている。
乃ノ花は息を呑み、濡れたままの紙袋をぎゅっと胸に抱えしめた。

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